我々が毎日仕事して生活してて、必ずしも順風満帆に生きれるわけではない。
個人で事業してて損することもあるだろうし、地震で家屋が倒壊するトラブルに巻き込まれる可能性もある。
所得税は「個人の所得」に課せられる税金だけど、商売してたら損失を被る場合だってあるし、空き巣に入られて盗難にあうかもしれない。
「所得」が必ず発生するわけじゃないのだ。
まさに未来は何が起こるか分からないのである。
所得税法では、個人の損失を「純損失」と「雑損失」の2つに分けて扱っている。
| 純損失 |
所得税は所得を10の区分に分類している。
①利子所得
②配当所得
③不動産所得
④事業所得
⑤給与所得
⑥退職所得
⑦山林所得
⑧譲渡所得
⑨一時所得
⑩雑所得
このうち、「不動産所得」、「事業所得」、「山林所得」、「譲渡所得」のどれかで損失が出た場合、他の儲かってる部分と相殺ができる。(利子・配当・一部の譲渡を除く)
これを損益通算という。
なお4つの所得の頭文字をとって、富士山上(不・事・山・譲)なのである。
そして損益通算しても、なお損失の額が出るとき、その損失を純損失という。
ところで所得税では「包括的所得概念」という考え方が採られている。
これは所得を、
所得額=期中消費額+期中純資産増加額
と表している。
人は所得を得たら消費するかまたは貯蓄するかの二択であるということを示しているのだ。
純損失は不動産所得/事業所得/山林所得/譲渡所得の計算上生じた損失だ。
所得を得るために生じた損失なのである。
損失を出した所得を無視して、黒字の所得だけで上の式に当てはめても、実際に消費や貯蓄できる額は少なくなってしまう。(計算が合わなくなる)
損益通算する理由の一つが「包括的所得概念」ということなのである。
| 雑損失 |
所得控除の1つに「雑損控除」というものがある。
年末調整では対応できない確定申告必須の所得控除だ。
雑損控除を受けるためには次の4つの要件がある。
⒈ 納税者本人、納税者と生計を一にする親族の所有する資産に損害が生じること。
⒉ 対象となる資産からは、「事業用資産」や「生活に通常必要ない資産」は除外される。
居住用不動産、生活に通常必要な動産、事業にいたらない(片手間に行う)業務用の資産、が対象となっている。
⒊ 損害の生じた原因が「災害」または「盗難」「横領」であること。
⒋ 損害額(時価ベース)がその年の課税標準の合計額の10%を超えること。
課税標準の合計額とは、損益通算や損失の繰越控除を適用した後の各種所得の合計額をいう。
雑損控除は、「所得」を得て「消費」した結果手に入れた生活用資産に損失が生じたとき、生活のために再び「所得」からそれを手に入れるため「消費」するのは大変だということを考慮して設けられた所得控除である。
納税者の1年分の所得から控除しきれない雑損控除の対象となる損失を雑損失という。
| 繰越控除 |
純損失と雑損失ともに発生年の翌年以後3年間の繰越控除をすることができる。
ただし純損失については正確な帳簿の作成が要求される。(青色申告)
所得を得るための活動、すなわち商売をして生じた損失なので、翌年以後の所得計算に影響を及ぼす場合にはいい加減な計算はあかんということである。
これに対して雑損失は、消費によって得た資産が本人の意思とは関係ない災難で被ったものだから、正確な会計帳簿の記入は必要とされていない。
*商売上の損失が純損失!
*生活上の事故によって生じた損失が雑損失!
簡単に区別するとこんなとこかな。
| 損益通算の対象となる譲渡所得 |
損益通算の対象となる譲渡所得とは、主に「商売する際に必要な資産」が対象となっている。
例えば、商品配達用トラックとか業務用大型冷蔵庫などが該当する。
土地や居住用財産、株式などの譲渡はこれとは別個に計算し損益通算の対象にはならない。(分離課税)
また生活に通常必要な動産(自家用車、家庭用品など)も対象外だ。(譲渡所得非課税なため)
ちょっと変わったとこでは「時価30万円を超える」美術品や書画、宝石は譲渡所得課税の対象であるが、損益通算の対象にならない。
ただし「災害」「盗難」「横領」により損失が生じたとき、その原価を他の譲渡所得の金額から、損失発生年とその翌年から控除することができる。(税金を安くできる)
誰でも損はしたくない。
でも避けて通れない場合もある。
七転び八起きで進んでいけばいい。
転んでもただでは起きぬ、純損失と雑損失!