15年くらい前にライブドア事件というものがあった。
粉飾決算により当時のライブドア経営陣が東京地検につかまった事件である。
それより前に、ニッポン放送株の取得を通じてフジテレビの支配権獲得を画策した出来事があった。
これによりライブドアの社名は日本全国に轟いたと言っても過言ではない。
インパクトはプロ野球算入を試みたときより数倍上回るだろう。
それにしても一介の新興企業にすぎないライブドアは、どうやって株式取得のための資金を調達したのだろうか?
その資金調達の方法が新株予約権付社債の発行なのである。(正確には、転換価額下方修正条項付き転換社債型新株予約権付社債)
新株予約権付社債のうち、まずは社債である。
社債とは、長期の資金調達のために一般大衆から一定の条件で借入れを行うときに発行する債券である。
公募して資金調達する点で金融機関からの借入金とは異なり、いつか返済しなければいけない債務という点で株式発行による資金調達とも異なる。
次に新株予約権とは何か。
新株予約権とは、これを所有する者が株式を発行または発行会社の保有する自己株式を移転してもらう権利のことである。
権利であるから、行使するしないの選択肢が所有者に与えられている。
そして新株予約権付社債である。
簡単に表現すれば新株予約権の権利行使の機会のある社債ということになる。
権利を行使しなければ、社債の償還日に貸したお金が手元に戻ってくるし、行使すれば自分のもつ社債が発行会社の株式に変わるのである。
発行会社の業績が好調でその株価が上昇しているとき株式に転換すると、貸した金額(転換価額)を超える価値になる可能性があるといえる。
社債の購入者(資金の貸付をする者)は、その企業の将来性・成長性にも注意を払う必要があるわけだ。
新株予約権付社債はいくつか種類があるが、ライブドアが発行したのは転換社債型新株予約権付社債といい、一般的には転換社債またはCB(convertible bond)と呼ばれている。
ここで非常に重要なことは、当初は返さないといけない借金が返さなくてもよくすることができることであり、貸借対照表における負債を純資産に変えることができることなのである。
借金を純資産に変える・・・!
まさに魔法のようではないか。
ライブドアはこの新株予約権付社債を800億円発行!し、その大部分をニッポン放送株の取得資金とした。
ライブドアの社債を一体誰が購入したのか?
同じ六本木ヒルズに事務所を構えていた外資系投資銀行のリーマン・ブラザーズである。
リーマンは当然のごとく、社債を株式に転換し売り抜けたわけだ。
当時のライブドア社長の堀江貴文氏は何か新しいことをやって人々に夢を与えてくれる国民のアイドルのような存在に上り詰め、それに伴ってライブドア株も人気が沸騰したので、リーマンにとって株の売り抜けは難しいことではなかったろう。
ライブドアという会社は堀江氏が独裁的に運営してるわけではなく、堀江氏を強力にサポートする税理士でCFO(最高財務責任者)の宮内亮治氏という人がおり、パッと見で二人三脚で経営している印象を受けた。
税理士にもこんな働き方もあるんだなと感心してしまったものである。(終わりは悪かったが)
この一連の騒動のとき、私は日商簿記1級の勉強の真っ只中で、税理士試験自体が眼中になかった。
しかしこの人の影響で、私は少しだけ税理士試験を意識するようになったのである。
その宮内氏は税理士試験合格に9年かかったと何かの記事で読んだことがある。
実は私も合格まで9年かかっている。
何とも不思議な縁?である。