我々が商売をやる目的は、シンプルに考えればお金を稼ぐためである。
豊洲市場の水産荷受会社で例えると、サカナを売ってお金を得る。(資産の譲渡)
自社保有の大型冷蔵庫の一部を、顧客の在庫保管のために貸して賃貸料を得る。(役務の提供:サービスの提供)
営利を目的に活動しているわけだから(慈善事業ではないから)、対価であるお金が得られなければ何もしないだろう。
タダで何かをしてあげるということは通常は無いといえる。
呉越同舟という格言がある。
お互い敵対しあう者どうしが、利害が一致したとき協力しあうことを意味する。
やはり荷受会社で例えると、同業ライバル社のA社とB社があり、A社は非常に儲かっており運転資金も潤沢にある。一方B社は大赤字であり運転資金も不足するようになって金融機関からの援助が必要な状況だ。
儲かってしょうがないA社にも悩みはある。稼ぎ過ぎて税金もバカ高くなりそうなのだ。
A社は一計を案じ、入荷したサカナの一部を無料でB社に引き渡すことにした。故意に利益を減らして税金を安くしようというのである。
B社の方もタダで仕入れができれば、売上=利益となり今期の収支が大幅に改善でき、金融機関からの支援も受けやすくなる。
ここにライバル両社の利害は一致し、無償取引は実行されたのである。
しかし法人税はこれを見逃さない。
A社に対しては通常価格でB社に販売したものとみなし収益計上(益金算入)することを求め、B社に対してその金額を受贈益として収益計上(益金算入)させて、もらったサカナは普通に仕入れ計上するのを要求している。
A社は販売価格相当額をB社に寄附したものと解釈され、その寄附の一部は費用計上(損金算入)が認められる。
これが役務の提供ならどうなるか。
A社が自社保有冷蔵庫をB社にタダで貸してやるのである。
この場合もA社は賃貸料相当額を収益計上(益金算入)しなければならないが、B社は受贈益の計上は無い。
これは本来かかるはずの費用が計上されないから、その分課税の対象となる利益が増えるのでOKという解釈らしい。役務の提供はカタチが無いので受贈益を認識しにくいってのもあるだろう。
お金のやりとりが無いのに収益を計上するという奇妙なルールは課税の公平のためのものだ。
企業どうしが共謀して不当に利益を減らして税金逃れするのを黙認してたら、正直な会社がバカを見てしまうからだ。
しかし別な理由もあると思われる。
企業=法人は法人格という人格を与えられてはいても、自ら意思決定することはできない。
別人格の自然人=経営者がそれを代行するのである。
法人は利益を追求するために誕生する。利益追求こそがその存在意義だ。
別人格の経営者の私利私欲により、法人が本来得られる利益を逃してしまう事態は看過できない。
ただ法人は実体が無いからそれを阻止することができない。
だからこそ法律で経営者たちを規制するのである。彼ら彼女らの意思決定を法人の意思決定に近づけるために法律で規制するわけだ。
法人は、法律によって人とされているものである。そして意思決定も法律によってなされる!