私は税理士試験で選択必修の法人税法を受験しなかった。だから官報合格後に最初にやったのは、法人税法の学習である。
事前の認識だと、会計上の利益に税法上のルールに基づく加減算をして、課税標準である所得を算出するイメージだった。
最初に専門学校TACの提供する法人税の申告書作成講座を受講することにした。そこで私は謎の光景を目にするのである。
法人税の申告書で一番重要なのは別表4である。企業利益を課税所得に変換していく作業が表現されるヤツだ。
企業利益→課税所得と変えて課税標準を算出し、それに税率をかけるのであるが、別表4では、税引後当期純利益に、わざわざ確定申告分のうち未払分の法人税・住民税・事業税と中間申告して支払済みの法人税と住民税を損金不算入として加算しているのである。そして事業税は当期確定申告分(前期の事業税)を損金算入として減算している。
当初の私の認識だと、税引前当期純利益に調整項目を加減算して課税所得を導き出すと考えていた。どうも法人税はそのような考えではないらしい。
事業税は損金算入できる税金だから調整項目として登場するのはよいのだが、問題は法人税と住民税だ。
この加減算処理は手間を増やしているとしか見えなかった。というか、かえって分かりづらく感じたものだ。
やがてTACから官報合格者向けに、主要税法科目の教材一式の割引販売のお知らせがあった。未受験科目もTACで学ぼうという趣旨のようだった。
ここで法人税法の年内完結コースセットを購入したが、ずっと手付かずのまま部屋の片隅に眠っていた。
しかしこの度のコロナ騒動で、特に緊急事態宣言発令後は、仕事が早く終わるようになった。(部分的なテレワークも推奨された)
自粛生活でずっと自宅にいると気が滅入ってくる。部屋の片づけなどしてたら法人税の教材が目についた。
DVDで授業も視聴できるので、一丁やってみるかと思い、4月中旬より開始した。
私は手を動かしてないと集中できない性質で、講義録も添付はされてたけど、講師先生の説明と板書をノートに書き記していくことにした。
講師の説明だと、株主総会で確定した決算に基づいて別表4等を作成し申告するため、年度末の決算で計上する法人税等は見積もりが含まれるとのことだった。だから別表4で改めて所得計算をするのだと。
株主総会→決算確定→法人税申告の順序だからという。
上場大企業だとあまりないようだが、未公開中小企業だとそんなケース多くがあるのかもしれない。
ただ私は違う考えを持った。企業会計に表示されている法人税等は、あくまで損益計算書における税金費用なのだと別表4はとらえているのである。
加算項目で、損金経理された法人税等とか損金経理された納税充当金(未払法人税等)と表示されている。
損金経理したとは、費用計上したと同義の税法用語である。損金経理した法人税等=費用計上した法人税等だ。
法人税法は、損益計算書上の税金はすべて費用なのだから、あらためて納付税額を計算するというスタンスなのである。
そう、企業会計の税金は、税法にとっては税金費用にすぎないわけだ。
企業会計の税金は、税金にして税金にあらず!