工業簿記の分野で意思決定というものがある。
意思決定というのは、会社経営上の意思決定であり、戦略的意思決定と戦術的意思決定に分けることができる。
戦略と戦術は改めて説明するまでもないが、サッカーに例えると、戦略はシーズンを通じた大局的な戦い方、戦術は試合ごとの局所的な戦い方、と説明できる。
簿記1級の原価計算で登場してくるのは、戦術的意思決定である。
テキストでは戦術的意思決定の例として5つ挙げられている。
⒈ 特別注文引き受け可否の意思決定
⒉ 内製か購入かの意思決定
⒊ 追加加工の要否の意思決定
⒋ セグメントの継続か廃止かの意思決定
⒌ 在庫管理のための経済的発注量の計算
このうち、2番目の内製か購入かの意思決定が印象に残った。理由は埋没原価の存在である。
内製か購入かの意思決定とは、企業の所有する工場の生産能力に遊休状態が生じてるとき、その遊休生産能力を活かして、製品製造に必要な部品を自家製造(内製)するか、今までどおり外部の企業から買い付ける(購入)するか、その判断を行う意思決定をいう。
細かく説明すると、ある製品を完成させるのに必要な部品はAとBとあるが、Aは内製、Bは他から購入していた。
しかし今期の生産計画では、部品Aを予定どおり作ると工場の設備で遊休時間が生じることがわかった。
そこで、、、、
その遊休時間に部品Bを自前でつくってみようかという野心が芽生え、内製or購入のどちらが有利か戦術的意思決定をするのである。
余剰ラインで部品Bをつくった場合の単価と、購入した場合の単価を比較して、どちらが有利か判定する。
このとき、工場には遊休状態だろうと稼働状態であろうと、どちらに転んでも発生してしまう固定費用というものがある。
例を挙げると、工場設備の減価償却費などの維持管理費といったとこか。
この固定費用は、意思決定する際の無関連原価、すなわち埋没原価となるのである。この埋没原価は意思決定する上での部品Bを構成する原価から除外されるのである。
要するにここでいう固定費用は今さら変えられない原価なわけで、それを意思決定の判断基準に持ち込んではいけないということだ。
埋没原価は、人生における過去とも似ている。
過去は変えられないのだと分かっていても、ああしておけば良かったなとか、なぜあんなことをしたんだろうと、しばしば後悔する。
私は悪い意味でのA型人間で、後悔するのが趣味みたいなところがある。後悔をして悶々とする・・・・まったく建設的ではない。
意思決定の勉強をしてて、自分の悪癖を指摘されているようで冷や汗が出たものだ。
しかしながら、こうしてブログ上で自分自身を省みると、なぜか気持ちがスッキリしてくるのだ。
誰かが見ているかもしれない媒体で自分を表現するのは、心の解毒作用があるのかもしれないね。