先日、お茶の水にある眼科に行って診察を受けた。最近視力が落ちてきたなと実感することが多くなったからだ。
結果としては、小さな白内障で加齢によるもののようだった。年に1度は検査を受けることにして、読書用の眼鏡をつくるための処方箋を出してもらった。
私が定期的に行くお医者さんは耳鼻科と歯医者だが、それに眼科が加わってしまったのである。
ところで上記の眼科・耳鼻科・歯医者の診察券を観察すると、いずれも医療法人社団と表記があった。
医療法人、すなわち法人であり、私の行く病院は法人税の管轄となるわけだ。そこのお医者さん先生たちは給与所得者=勤務医なのである。勤務医=自然人、病院=法人と別人格なのだ。
しかし最初から法人だったのではなく、スタートは個人事業者医師で、事業が軌道にのってから法人成りしていったと思われる。
今回は個人で活動する医師=開業医の税金関係について考えたい。
ところで病院と何気なく使ったが、この呼称は正しいのだろうか?
日本には医療法という法律があるが、そこで病院についての規定がある。
病床数20床以上の入院施設をもつのを「病院」、無床もしくは病床数19床以下の入院施設をもつものを「診療所」と区別している。
病院には医師・看護師・薬剤師などの最低配置人数に規制があるが、診療所には医師が1名いればよく人数の規制は無い。
医院やクリニックもよく耳にするが、これらは医療法で規制はされてないため、病院、診療所のどちらでも使えるが、一般的には、診療所=医院=クリニックという扱いらしい。
私が通うお医者さんは、眼科は病院、耳鼻科と歯医者は診療所が正しい言い方だったというわけだ。
厚生労働省の令和元年5月末の医療施設動態調査によると、病院は約8,300院、診療所は歯科も含めて約170,000ヶ所で、圧倒的に診療所の方が多い。
さて日本の医療機関の概要が分かってきたところで開業医である。
開業医は個人事業者で所得税法における事業所得を得る者である。
事業所得は、総収入金額-必要経費(場合により-青色申告特別控除)で計算する。
医療を提供することによる売上は、社会保険診療報酬によるものと自由診療によるものとに大別される。
社会保険診療報酬とは、いわゆる国民皆保険制度の適用対象の医療報酬のことで、窓口で受け取る報酬(患者負担)が30%、保険者(国民健康保険など)に請求する報酬が70%である。
自由診療報酬は美容整形など保険対象外の報酬で、100%窓口で受け取りである。
上記の2つの報酬が総収入金額に算入される。
必要経費には開業医ならではの特典がある。
社会保険診療報酬部分について、概算経費と実額経費といずれか多い金額を必要経費に算入できるのである。
概算経費は売上の約70%を経費にできる特例で、実際にかかる費用を概算経費より安く抑えることができたら、その分だけ課税の対象外が増える=節税することができるのである。(ただし青色申告特別控除は使えない)
また高額な医療用機器等を導入した際は、通常の減価償却の他に特別償却を経費に計上できる。(所得を減らして節税可能)
医療は仁術という格言があるが、お医者さんも理想だけでは生活できないわけで、懐に余裕があって初めて最上の医療サービスが提供できると思われる。そのために税制面でサポートしているのだろう。
開業医というと、故手塚治虫さんのマンガ、ブラックジャックを思い出す。
私は原作マンガよりアニメの方が好きだが、ブラックジャックこと間黒男(はざまくろお)の提供する医療は100%自由診療だ。しかも無免許医だからその医療は非合法なはずである。
にもかかわらず医者をやってられるのは、弱きを助け強きを挫く面があることと、高額納税者だからだと考えている。確定申告は助手のピノコが担当しているはずだ。