私は豊洲市場の水産荷受(にうけ)会社で働いている。
荷受会社は、営業部門、事務部門、冷蔵倉庫部門の3部門より構成されている。
私は営業部門に所属し、主にカニの加工品の販売を担当している。荷受会社は卸売業だから、自ら商品を創り出すことはできない。メーカーが製造した商品を仕入れして販売することにより売上を立てるのである。
私が取り引きするメーカーは、鳥取県境港市(ゲゲゲの鬼太郎で有名!)に工場を構えている。境港市には水産加工団地があり、多くの水産会社が軒を連ねているのだ。
そこで働く従業員のほとんどすべてが、鳥取・島根の出身者(鳥取・島根はセットでよく語られる)だが、工場の担当者と電話で受発注のやりとりをしているとき、彼女の実家が山をもっているという話になった。
山といえば山林所得である。その当時、ちょうど所得税法の勉強に励んでたころだった。だから税理士試験を頑張ってることを話そうかと思ったが、なぜか言いそびれてしまった。肝心なときに躊躇する、尻に火が付くと実行する・・・ 私の人生そのものかもしれない。
というわけで今回は山林所得である。
山林所得とは、山林の伐採または譲渡による所得をいう。
山と木々をまるごと売却した場合は、山部分(=土地部分)は譲渡所得となる。
まずは山林とは何ぞやってとこだ。一般的には森林と同じ意味で使われているようだが、山林の方が木々の生えてる山も含めた広い概念のようである。森林は平地・山を問わず木々の茂っている状態だろう。
山林所得=森林所得でも問題ないと思われる。
日本の森林事情についてだが、国土の約70%弱が森林であり、先進国のなかではフィンランドに次いで世界第2位、世界有数の森林大国なのである。都会に住んでると理解しづらいが、とても自然豊かな国といえよう。 とても誇らしいことではないか!
森林そのものの内訳は、原生林(自然の力で成長)・二次林(一旦伐採されたけど復活)・人工林(人が資材にするため育成)の三つである。
森林の所有形態は、私有林(個人・企業が所有)が森林全体の58%、国有林(国が所有)が31%、公有林(地方自治体が所有)が11%となっている。
山林所得の対象とするのは、個人所有の私有林ということになる。(企業所有は法人税の管轄)
森林を育成し伐採して所得を得るためには長い年月が必要である。そのため他の所得とは区分して税額計算(分離課税)をする。なるだけ税負担が重くならないよう計算に工夫が凝らされている。
山林所得と似た所得に退職所得がある。こちらも分離課税で他の所得と区分して税額計算し、しかも税負担が小さくなるよう納税者に便宜を図っている。
山林所得にしろ退職所得にしろ、獲得まで長い時間がかかるものは、税負担を少なくしてやるというのは所得税法の人情というヤツだろう。
なお山林をその取得の日以後5年以内に伐採し又は譲渡する所得は、山林所得には該当しない。山林を育成するというよりは転売という認識と思われる。
5年以内は、事業として本気で取り組むなら事業所得に、片手間にやっていることなら雑所得に該当する。
なお確定申告で山林所得を申告するケースは、かなりレアなことらしい。