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商業簿記

~商業簿記~貸倒引当金

卸売市場には、サカナを全国から集めて市場内で販売する荷受会社と、そのサカナを市場内で買って飲食店や魚屋などに販売する仲卸業者と、二つの業態がある。

豊洲市場(旧築地市場)に関していえば、荷受会社は7社あり、そのうちの4社は上場企業でもあり、比較的規模も大きい。それに対して仲卸業者は約500社弱あり小規模事業者が多い。

市場内の売買は基本的に掛けで行われる。商品が先で代金後払いということだ。

                       

荷受から仲卸業者への販売で、かつて掛代金の回収不能が多発したことがあった。仲卸業者に比べ荷受会社は資本力があるので、代金の回収についてどうしても甘くなりがちだった。資金繰りが苦しいから支払の猶予をくれと言われ、荷受側もいいよと棚上げしてしまうのである。

結局、倒産や廃業などされて代金を回収できず、売掛金の貸倒れが多々おこってしまったということなのだ。

                  

こんな体たらくでも荷受が何とかなっていたのは、昭和時代の儲かってた頃に蓄えていた金融資産があり、そこからもたらされる受取利息配当金の額が大きく、営業赤字を営業外収益でカバーすることができたからなのである。

                     

ただその当時、私は会計の知識があまりなく、巨額の貸倒れが発生するたびに、会社は倒産するんじゃないかと思ったものだ。そして同時に企業会計に興味を持つきっかけにもなった。貸倒れこそが、私を簿記の世界へ導いたといっても過言ではないだろう。

そういったわけで、簿記1級学習時には、貸倒引当金について特別な思いで勉強した。

                      

貸倒引当金とは、商品・製品などを販売することにより生じた売掛金などの金銭債権について、その期末残高のうち次期以降に回収不能になる可能性があるとき、この貸倒れに備えて設定する引当金である。

ここにおいて金銭債権とは、将来他人から一定額の金銭の支払いを受ける権利をいう。

                

貸倒引当金は、損益計算書と貸借対照表の二つの面からその計上を説明できる。

損益計算書というのは、当期に発生した収益と費用をできるだけ適切に期間対応させることに心を砕いている。

売掛金の回収不能が発生したとき、その売掛金が前期の売上に伴って生じたものならば、その損失を当期の売上に対応させて計上するのは、きわめて不適切ということになる。むしろ前期の売上に対する回収不能ならば、発生したのが当期でも前期に計上するのが筋である。 が、前期に売掛金の回収できるか否かは確定していない。だから過去の実績からこれくらいは回収できるできないを予測し、できないかもしれない部分を貸倒引当金として設定するのである。

仕訳は(貸倒引当金繰入)〇〇(貸倒引当金)〇〇となり、借方で費用として当期の売上に対応させ、貸方で売掛金等の金銭債権の控除項目とするのである。

また貸借対照表の資産の部は将来キャッシュを生み出すものを表現している。売掛金等の金銭債権も将来100%額面通りのキャッシュが得られる保証は無い。だからある程度保守的に、見る人に過大な期待を抱かせないよう貸倒引当金を控除して計上するのである。

                   

貸倒引当金を略して貸引(かしびき)という。ちなみに築地市場において全体の仕事が終わって静かになる頃(だいたい昼の1時くらいか)を河岸引き(かしびき)という。知る人ぞ知る同音異義語である。

作成者: advance

豊洲市場の水産荷受会社(セリ販売する会社)に勤務してます。
勤務時間が夜中から昼までです。
夜の活動は自粛?して、午後の早い時間帯に勉強に励み、税理士試験に合格しました。

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