私は大学卒業以来ずっと東京都の中央卸売市場の水産荷受会社で働いている。
仕事の特徴といえば、早朝勤務であることセリ販売することなどが一般には知られている。早朝にセリ販売するといっても、結局はただの卸売業である。
ただ荷受会社には会計的に大きな特徴がある。地方出荷者(荷主)が漁港で水揚げされたサカナを東京に送るわけだが、そのサカナを荷受会社が受託販売するのである。
簿記1級のテーマの中で特殊商品販売という分野がある。割賦販売、未着品販売、試用販売等いろいろあるが、個別の問題を解くとあまり難しくない。が、種々の特殊商品販売が合体した総合問題となると、難しさが数倍にパワーアップするのである。
特殊商品販売のなかに受託販売と委託販売というテーマがある。この二つこそが荷受会社の営業・販売を特徴づける会計処理といえよう。
受託販売とは、出荷者に販売委託された商品の販売をして、その販売額の一部を手数料として自分の収益とし、立替費用を差し引いた後、残額部分を送金する商いのことである。
この受託販売は荷受会社では大きなウエイトを占めているにもかかわらず、簿記検定や税理士試験簿記論での扱いは小さいものがある。しかも手数料部分しか収益として計上しない会計処理が紹介されている。(なんてことだ・・・!)
荷受のサカナの販売は上記の受託販売と普通の仕入販売との二本立てである。仕入販売は通常の売上計上して受託販売は手数料収入だけの計上だと、損益計算書で取引規模の表示が分かりにくいので、受託も販売額を売上にして手数料(水産は5.5%)を売上総利益としている。
粗利益率は常に一定だから、サカナを値段を高く量を多く売ればそれだけ会社の懐が潤うのが受託販売だ。
専門学校のテキストで受託販売の扱いが小さいのは、この販売方法が商売のやり方としてマイノリティだからなのだろう。
現に私が入社したころに比べると、売上高に占める受託販売の比率は低くなっている。
荷受の受託販売に対し、出荷者の会計処理が委託販売である。
委託販売の最大の特徴は、出荷した商品の売却が確定するまでは、自分の手元から商品が離れているにもかかわらず、積送品という勘定科目で在庫扱いになるということである。
商品積送時の仕訳は(積送品)〇〇(仕入)〇〇で仕入勘定を減らし、販売確定時に逆仕訳をするのが一般的な会計パターンだ。
荷受では、一般的に鮮魚類のような消費期限の短いものが受託販売で、冷凍水産品のような長いものが仕入販売で取り扱う傾向がある。(もちろん例外は多々ある)
年始の初セリで、青森県の大間のクロマグロが1匹2億円近い値段で売れていたが、あれは受託販売である。(のはずである)