私はけっこう前から株式投資をしている。日商簿記1級に合格したころから、ちょっとした財務諸表の専門家気取りで始めたのである。
会社四季報をパラパラめくっていくと、〇〇ホールディングスって名のつく会社に出くわす。
〇〇ホールディングスとは持株会社のことである。
持株会社というのは、配下にいくつかのグループ企業をかかえ、かつ、それらを支配する目的で当該株式を保有する会社である。株式の保有比率は100%である。
持株会社の収益は配下企業からの配当金である。彼らの業績が良ければそれだけ配当金も増える。企業会計でも連結決算の成績が良ければ株価も上がるだろう。
持株会社が独自に商売をしてないとき、収益は配当金だけということになる。ということは配当所得という所得税だけが課税されるのだ。会社のくせに所得税しか払ってない特殊な存在なのである。
法人税は、新たに得た経済的利益のすべてを所得であるととらえる、包括的所得概念を採用している。
持株会社をつくる仕組みを株式移転というが、そこで新たな経済的価値が発生したら、法人税の課税の対象となるのである。
株式移転の登場人物は3名である。
既存の会社A社・・・子会社になる
新設されるB社・・・持株会社になる
A社の株主 ・・・B社の株主にと変わる
B社を新設して、A社の株をB社に譲渡して、A社の株主にはB社株を交付する。というのが株式移転の基本的な構造だ。
ここでA社の株主達は実際にA株を引き渡してB株を受け取るのではなく、手元のA株がB株に変わるだけで取得価額も同じままである。
新設される持株会社B社は、A社の株式を受け取るが、その株式(時価)で出資を受けたものとして資本金等の額を計上する。これは資本取引に相当するので課税関係は生じない。
3名のなかで唯一税金の対象になりそうなののが、既存の会社A社である。保有している資産のうちある条件を満たすもの(時価評価資産)を、帳簿価額(貸借対照表における額)ではなく、その再編時の時価で評価計上し、利益が出たら益金算入(収益計上)、損失が出たら損金算入(費用計上)して、両者の差額がプラスのとき法人税を払うことになるのである。
上記の他に、ある企業グループ内の資本関係の濃い複数の会社が持株会社を新設して、その子会社になるパターンが考えられる。このとき企業グループ内の複数の会社は時価評価資産に該当する資産の時価評価を行わず、したがって税金は発生しない。これを適格株式移転という。
最初の説明の場合は、資本関係の薄い又は無い会社どうしで、赤の他人どうしで持株会社をつくる株式移転で非適格株式移転という。
またグループ内企業どうしでも、既存会社の株主達に持株会社の株式以外に金銭を交付した場合は非適格株式移転となり、やはり税金関係が発生してしまう。さらに株主達には今までの保有株と、交付される持株会社株式・金銭との間に譲渡損益を認識しないといけないので、これもまた税金関係が生じてしまうのである。
ある企業グループが、グループ内の経営資源を効率よく使用するためにグループ内企業どうしで資産の移転をしたり、会社どうしの関係を変えたりして相乗効果(シナジー効果)を得たいと考えるとき、それを税金で邪魔しないようにするのが適格組織再編成である。
今の世の中はグローバル化し、日本企業のライバルは日本企業だけでなく、日常から世界の企業がライバルとなっている。世界と戦う以上、日本企業どうしで足を引っ張りあうのは国益に反するということで、この制度が設けられていると思われる。
一株主の立場としては、企業価値があがって株価が上昇し、かつ、高配当になるのであれば、組織再編大歓迎といったとこかな。