私は税理士試験の選択必修科目は所得税法を選択した。所得税10所得のなかでは譲渡所得が一番分かりにくく、かつ、大きな驚きがあった。
みなし譲渡がその最たるものである。
具体的には、ある個人が企業に対してタダでモノ(金銭は除く)をあげた場合、なんと所得税を払わないといけない場合があるのだ。
ちなみに個人→個人でモノをあげた場合は、あげた方に税金はかからない。(もらった方は贈与税がかかる可能性あり)
譲渡所得の対象とするモノ(資産)は、現金または売掛金のような金銭債権を除く、経済的価値があって他人に移転でき、値上がりや値下がりするものだ。
譲渡所得は、総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(50万円)で算出する。
このときタダで譲渡したとき、総収入金額=0となる。これを所得税法はけしからん!といって、そのモノの時価で評価することを求めている。
この時価が取得原価以下だと課税されないが、高いと税金の対象となるのである。
そもそもただのサラリーマンである私自身は、企業にタダでモノをあげる行いは妄想すらしないが、いわゆる資産家で会社をいくつも経営したり所有したりしてる人が、この所得税みなし譲渡の対象となるのだろう。
時価が取得原価より高い場合、なぜ課税の対象になるのだろうか。
個人→会社でモノの移転があったとき、個人で課税されないでモノが会社の手にわたると、あとは会社がそのモノをどう処理しようと、それは法人税法の管轄で、所得税法としては打つ手がなくなってしまう(課税機会が無くなる)というのが理由のようである。
日本において所得税法は明治時代に成立しているが、法人税法は昭和初期に所得税から分離独立して成立している。
いわば所得税は法人税の先輩にあたるわけで、立場的に自分を差し置いて格下が税金をとるのは許せんということだ。ばっちり所得課税したあとなら、法人税は好きにしていいよということかな?
なお、タダで駄目ならタダ同然の金額(例えば1円)ならOKなのかというと、全然そんなことはない。
低額譲渡といって、時価の2分の1未満で売却すると、時価を総収入金額にしないといけないのである。