昨年10月に増税となり、今やすっかり悪名高くなった消費税である。
消費増税→インバウンドの減少→コロナウィルスの影響→緊急事態宣言の4段階で景気は悪化していった。
今回は、その第1ステップの消費増税の主役、日本の消費税の仕組みについて観てみよう。
| 帳簿方式
日本の消費税を簡単に表現すると、売上高に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除して算出した付加価値に課税する「帳簿方式」による付加価値税であるといえる。
これは何を意味しているかというと、帳簿に記載されている売上高と仕入れと両方の消費税額を計算し、その差額を税務署に納付するということだ。
これは致命的に重要なことである。
なぜ重要かというと、税務署は個々の事業者の消費税の受取・支払には興味がないということなのである。
例えば、ある事業者がお客さんのためだと称して商品を売り上げる際に一切の消費税を受け取らなかったとする。
税務署に申告するとき、私は消費税をまったく受け取ってないから納税する必要は無いと申し立てても、それはまったく通用しない。
基本はあくまで帳簿で、帳簿上の売上から受取消費税を計算し、同じく仕入れから支払消費税を計算し、両者の差額を税務署に納付することになるのである。
これが「帳簿方式」の一大特徴だ。
| 納税義務者
我々が買い物するときは、商品価格と合わせて消費税の支払をする。
消費税を支払う相手はコンビニだったりスーパーだったりして税務署ではない。
税務署に消費税を納付するのは「事業者」なのである。
税金を税務署に納付する者を「納税義務者」というが、消費税の納税義務者は、「国内」において課税の対象となる取引を行う「事業者」と、輸入取引において保税地域(関税の徴収を一時留保する場)から課税貨物(消費税の対象となる外国貨物)を引き取る「事業者」と「個人」である。
国内取引は事業者限定だが、輸入は事業者だけでなく素人も対象になる。
| 小規模事業者の場合
「例外のない規則はない」とか「規則は破られるためにある」なんて格言があるが、納税義務者の規則にも例外がある。
「事業者」(法人・個人事業者)のうち、#1基準期間における#2課税売上高が1,000万円以下の者については、納税義務が免除されている。
これは受取消費税-支払消費税がプラスなら差額は懐に入れてOKなことを意味している。
この納税義務が免除される事業者を「免税事業者」という。
また納税義務を負う事業者を「課税事業者」という。
免税事業者は税務署へ納税しに行かなくていいだけで、日々の取引の消費税の受取・支払は普通に行うことになる。
なお、免税事業者か課税事業者かは選択制であるが、受取消費税-支払消費税=マイナスの場合は消費税の還付を受けられるので課税事業者の方が有利である。
#1 納税義務の判定の基準となる期間。個人であれば前々年、法人なら前々事業年度を指す。(原則)
#2 消費税の課税の対象となる取引の売上高を指す。
| 課税の対象
税務署に消費税を申告・納付する者は誰なのか分かったが、次は何に対して消費税が課されるかである。
消費税の課税の対象はシンプルだ。
「事業者」が対価を得て行う「有償取引の資産の譲渡」「資産の貸付け」「役務の提供」である。
また法人の役員に対する資産の低額譲渡・贈与または個人事業者の家事消費も課税の対象である。
私は豊洲市場の水産荷受(にうけ)会社に勤務している。(セリ販売する会社)
荷受の仕事で例えてみよう。
・資産の譲渡 サカナの販売は消費税課税(軽減税率)。
・資産の貸付け 業務用大型冷蔵庫の貸付けは消費税課税。
・役務の提供(いわゆるサービス) サカナの配送サービスは消費税課税。
・役員に対して会社所有の建物を破格の値段で又は無料で引き渡した場合 その建物は時価相当額で譲渡したとみなして時価相当額に対して消費税課税。
・個人事業者の家事消費 社員が独立して個人でサカナ屋を営んだとして、その人が販売用のサカナを晩飯に使用した場合は、その定価相当額に対して消費税課税。
最後の家事消費は説明が必要だろう。
サカナを消費できたということは、それに見合う収入があったからだよねということで定価相当額に対して消費税課税なのである。
これは所得税の計算でも同様で、販売用資産を自家消費したら販売額相当額を収入とするのである。(帰属所得という)
| 消費税の構造
消費税には、「課税対象取引」「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」の4つの区分がある。
・不課税取引
国外の取引。
事業として行わない取引。
無償取引のうち、みなし有償取引(役員への贈与等)以外のもの。
これらは消費税法の適用対象外、不課税とされる。
・非課税取引
消費税法の適用対象ではあるが、消費の性質に相応しくないもの、社会政策上の配慮に基づく理由から非課税とされる取引である。
前者の代表例は土地の譲渡や貸付け等、後者の代表例は健康保険適用の医療サービス等である。
・免税取引
輸出品は消費税が免税となる。
これは「消費地課税主義」という考え方と国際競争力の低下防止の観点より免税とされている。
これは免税ショップにおいても同様の扱いである。(外国で消費されるから)
国内で仕入れして売上がすべて免税の場合、仕入れに係る消費税額は還付される。
日本の消費税は、消費型の「付加価値税」だからだ。
輸入品には消費税課税で、輸出品は消費税「免税」である。
・課税対象取引
上記3つ以外が、日本における消費税額の計算の対象となる。
| 仕入れ税額控除
日本の消費税は付加価値税である。
売上に対する消費税から「仕入れに対する消費税」を控除して、初めて付加価値税ということができる。
控除の対象となる課税仕入れは以下のとおり。
・国内において行う課税仕入れ(課税対象取引)
・特定課税仕入れ(インターネットなどを介して行われるサービス等は国外・国内に関係なく国内取引とされる)
・保税地域から引き取られる課税貨物
これらは、ただシンプルに控除されるわけではない。
課税売上割合{課税売上÷(課税売上+非課税売上)}が95%以上かつ課税売上高が5億円以下の場合は、仕入れ消費税額の全額が控除できる。
それ以外の場合は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを適用して仕入れ消費税額を控除する・
*個別対応方式
仕入税額控除=課税売上に対応する課税仕入れ等に係る消費税額+課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入れ等に係る消費税額×課税売上割合。
*一括比例配分方式
課税仕入れ等に係る消費税額×課税売上割合
一括比例配分方式の方は横着したやり方だが、両者とも選択したら2年は継続適用しないといけない。
| 税率
消費税額は付加価値に税率を乗じて算出する。
標準税率10%、軽減税率8%は誰もが知るところだ。
ただし厳密には以下のとおりである。
・標準税率10%=消費税7.8%+地方消費税2.2%
・軽減税率=消費税6.3%+地方消費税1.7%
私が消費税法を受験してた頃は、消費税4%+地方消費税1%だったので、今よりよほどシンプルだった。
| 終わりに
国家の税目別歳入ランキングは、所得税、消費税、法人税の順となっている。
これらが税収に占める割合の高い税目だが、これらを基幹税という。
現在はトップの所得税に2位の消費税が肉薄している。
近いうちにこの順位は逆転するだろう。
日本は少子高齢化により労働人口が減少しているからだ。
国家財政の健全化のためにも、消費税の更なる増税は避けて通れないと思われる(泣)