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法人税

~法人税法~外国税額控除

法人税法において、法人の納税義務者は「内国法人」と「外国法人」に区分される。

内国法人とは、国内に本店または主たる事務所を有する法人のことである。

外国法人とは、内国法人以外の法人をいう。

日本は法人が設立された国(本店所在地国)がどこにあるかによって、「内国法人」と「外国法人」とを区分している。

これは設立準拠法主義と呼ばれている。

                     

内国法人は全世界所得が課税の対象となり、外国法人は国内源泉所得のみが課税の対象となる。

所得は、それがどこで生じたかにより、国内源泉所得国外源泉所得とに分けられる。

全世界所得とは、国内源泉所得と国外源泉所得の両方を足したものなのである。

                

| 外国税額控除制度

内国法人の課税の対象は全世界所得である。

国内で稼いだ「国内源泉所得」と海外で稼いだ「国外源泉所得」の両方を合算して課税される。

しかし国外源泉所得に対して、源泉地国で法人税が課されている場合、同じ所得に対し日本と源泉地国とで二重課税されてしまう。(国際的二重課税という)

この国際的二重課税を防ぐために設けられているのが「外国税額控除制度」である。

この制度は任意の適用で、この代わりに「国外源泉所得の税引後の純手取額」を課税所得に加えて税額計算する「外国税額損金算入方式」も選択できる。

外国税額控除は、「税込の国外源泉所得」を国内源泉所得に加算したあと、税額計算で算出した法人税額から改めて外国税額を控除する手順で行う。

                  

| 外国税額控除 計算方法

外国税額控除の対象となる海外の税金は、法人の所得を課税標準とするものに限定される。

また控除対象であったとしても、日本の税率を超える高率負担部分については控除できない。

ただし、この高率部分は通常の経費として損金算入することはできる。

高率部分に該当するか否かは、内国法人が納付する外国法人税ごとに判断していく。

海外支店 国外源泉所得 1,000外国法人税 500(税率50%)
日本の法人税 35%二重課税部分 350 (税率35%)
外国税額控除 適用
超過分 150 (税率15%)
損金算入可能

処理手順は、別表4控除対象外国法人税額として加算し(課税所得に含める)、別表1にて控除外国税額として控除する(税額からダイレクトに差し引く)。

                   

*別表4の処理

(1) 納付する外国法人税の額

(2) その外国法人税額の課税標準の35%

(1)と(2)といずれか低い額を加算する。

[別表4]
区分金額
税引後当期純利益
加算項目損金不算入
益金算入
減算項目損金算入
益金不算入
仮計
寄附金の損金不算入額加算
法人税額控除所得税額加算
控除対象外国法人税額加算
合計
差引計別表1の計算で使用
総計
所得金額

                   

*別表1の処理(税額計算)

(1) 控除対象外国法人税額(別表4の加算額)

(2) 控除限度額

別表1の差引法人税額×{(#)当期の国外所得金額÷別表4・差引計}

(#) 当期の国外所得金額

①国外源泉所得に係る所得金額(手取+控除対象の税金)

別表4・差引計×90%

①と②と少ない額を選択

(3)  (1)と(2)といずれか少ない値を別表1で控除する。

{別表1}
所得金額別表4の最終値
税額計算~千円未満切捨~
法人税額
租税特別措置法による特別控除額控除
差引法人税額
課税留保金額に対する税額加算
法人税額計
控除所得税額控除
控除外国税額控除
差引所得に対する法人税額~百円未満切捨~
中間申告分の法人税額控除
差引確定法人税額

ここで、控除限度額とは日本の法人税額の範囲で税額控除するということであり、国外源泉所得に係る所得金額とは海外所得に日本の法人税等を適用して算出した所得金額のことである。

また、当期の所得金額の90%相当の意味するところは、全所得の10%程度は国内の本社の貢献があると考えられるからだ。

                     

具体的に数値を入れて計算してみる。

A社の所有割合が10%である外国法人B社より配当5,000を受けたが、ここから外国源泉税450が徴収されて、手取り4,650を収益に計上しているとする。

当期のA社の別表4の差引計は60,000、別表1差引法人税額は16,500である。

(1)控除対象外国法人税額(別表4)

 450<5,000×35%=1,750 ※450

(2)控除外国税額(別表1)

①控除対象外国法人税額 450

②控除限度額

16,500×{#5,000÷60,000}=1,375

# (a) 手取り4,650+外国税450=5,000

  (b) 60,000×90%=54,000

  (c) (a)<(b) ∴5,000

③ ①(450)<②(1,375) 少ない方450別表1で税額控除する。

                   

| 外国税額控除と外国税額損金算入方式

最初の方で、国際的二重課税を排除するには外国税額控除と外国税額損金算入方式の2つのやり方があると説明した。

後者の外国税額損金算入方式は、国外源泉所得のうち手取りを収益に計上し、国外で徴収された税額を損金算入する。

これは手取りを獲得するのに外国税を支払ったというイメージであり、その差額に日本の法人税が課されるのだから、税額からダイレクトに控除する外国税額控除に比べて、国際的二重課税の解消度合は少なくなる。

わざわざ納税者に不利な規定を設けているのには理由がある。

外国税額控除は文字通り法人税額から直接控除する方法だが、これはあくまで法人に所得がある場合に適用できる制度だ。

法人が赤字で所得が無く納付税額が無いとき、この規定は適用することができないのである。

そんなとき外国税額損金算入方式の出番だ。

少なくとも外国で徴収された税金は損金算入できるので、適用不可能な外国税額控除よりも納税者に有利なのである。

                  

| 控除限度額と控除対象外国法人税額の「繰越し」

外国税額控除には限度額が設定されているが、その限度を超過した分について一切控除は認められないのだろうか?

実はそんなことはなく、ある程度融通の利く制度となっている。

控除限度額の繰越し

当期の外国法人税額が控除限度額に満たなく、控除限度額のうち余裕のある部分「控除余裕額」が生じたとき、その控除余裕額は翌年以降3年間繰越すことができる。

例えば、当期の外国法人税額が800で控除限度額が1,000のとき、差額の200を繰り越せる。

翌期の外国法人税額が1,000で控除限度額が800だとしても、前期の繰越し分200と合わせて1,000となり、、翌期の外国法人税額は全額控除できるのである。

控除対象外国法人税額の繰越し

今度は反対に当期の外国法人税額が1,000で控除限度額が800だとする。

限度超過額」である差額200は当期の税額計算から控除できないが、これも翌期以降3年間繰越すことができる。

翌期の外国法人税額が200で控除限度額が400の場合、繰越された200と合わせて限度額いっぱいの400まで控除できるわけだ。

超過したのが限度額であれ外国法人税額であれ、翌期以降3年間繰越して活用できるということだ。

                       

| 手続き

外国税額控除は、外国で税金を納付してれば無条件に受けれるものではない。

確定申告書に、外国税額控除の適用を受けるべき金額、その計算に関する明細の記載、外国法人税を課されたことを証する書類の添付が必要だ。

                    

| 終わりに

日本国内だけでなく、諸外国も含めた税務を「国際課税」というが、二重課税排除の外国税額控除は、その序章のようなものだ。

私は海外勤務をしたことはないし、日常の仕事で外国企業と商売することもないので、少なからず国際課税はイメージしにくい。

国際課税は今後の課題といったとこだ。

作成者: advance

豊洲市場の水産荷受会社(セリ販売する会社)に勤務してます。
勤務時間が夜中から昼までです。
夜の活動は自粛?して、午後の早い時間帯に勉強に励み、税理士試験に合格しました。

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