私は豊洲市場の水産荷受会社で働いている。
勤務している時間帯がかなり特殊で、深夜からお昼前までの文字通り「午前中」が働く時間だ。
仕事終わりに一杯飲みに行くっというのは基本的に無い。
それでも地方の出荷者が東京に出てきたときは、付き合いで夕方の早い時間に飲み会することもある。
割り勘と思いきや先方が支払いを申し出て、お店で領収書をもらって会がお開きになる場合がある。
「領収書」をもらう、ということは「交際費等」として経費で落とすと思われる。
今回はその「交際費等」について観てみよう。
| 交際費等とは何か
会社が事業を行ううえで、得意先や仕入先その他事業に関係する者との関係を円滑にするための接待の経費、これを「交際費等」という。
税金計算における交際費等には以下に掲げる特徴がある。
税務上、接待等の実態をもつ支出はすべて交際費等に該当する。
経費科目といった名目ではなく実質で判断するのだ。
例えば、会議費・販売促進費などと経理しても、その実質が接待等ならば、それらはすべて交際費等とされる。
交際費等の支出先は、直接取引してる者だけに限定されない。
得意先・仕入先以外に、会社の役員・使用人や株主なども含まれるのである。
交際費等は、接待等の直接的な支出だけでなく間接的な支出も含まれる。
具体的には、接待後の得意先のタクシー代や事業関係者に対する招待旅行に同行した社員の宿泊費(こいつはめんどくせー)などである。
まとめると交際費等に該当するには3つの要件というものがある。
① 支出の相手が事業に関係ある者であること。
② 支出の目的が親睦を通じて取引を円滑に進めること。
③ 支出による行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類似する行為であること。
| 交際費等から除外されてしまうもの
次に掲げる費用は交際費等から除かれるが、それは違う項目で損金として扱われるということである。
つまり交際費等の損金不算入額の計算の対象から除かれるということなのである。
従業員の慰安のための運動会や演芸会、社員旅行のための通常要する費用は、福利厚生費とされる。
社名の入ったカレンダーや手帳を事業関係者に贈与するのに通常要する費用は、広告宣伝費とされる。(私も取引先からもらったことがある)
会議に関連して提供される弁当や茶菓などに通常要する費用は、会議費とされる。
なお会議には、来客との商談や打合せ等が含まれる。
さてここからがややこしい。
社外の者との飲食費で「1人当たり5千円以下のもの」は、単純に損金とされ交際費等に該当しない。
ただし社外の者との飲食費で「1人当たり5千円超」になると交際費等とされる。
社外の者とのゴルフや観劇に伴う飲食費用は飲食費ではなく普通の交際費等となる。それらのイベントが終了した後の飲食代は飲食費となる。
それなら従業員や役員などの社内の者との飲食費はどういう扱いかというと、金額にかかわらず交際費等となる。
これも例外があり、全従業員を対象とした忘年会費用は飲食費ではなく福利厚生費となる。
全従業員を対象とか一律というのがキーワードだ。
部や課単位での飲み会は飲食費に該当する。(会社からお金が支給された場合。これがないと単なる消費になってしまう)
| 損金不算入額の計算
法人税額の計算は、会計上の利益に税務上の調整額を加減算して算出する。
損金不算入というのは、会計上の利益に加算する処理で、その加算額が大きいほど納付しないといけない税額も大きくなってしまう。
損金不算入額は小さいほうが有利ということなのだ。
損金不算入額の計算は資本金1億以下の「中小法人」と「中小法人以外」とに区分される。
資本金1億以下であっても、資本金5億円以上の法人の100%子会社ならば「中小法人以外」とされる。(親会社が助けてくれると考えられるから)
(1)中小法人以外
損金不算入額=支出交際費等-接待飲食費×50%
ここで「接待飲食費」とは社外の者との飲食費で1人当たり5千円超のものを指す。
(2)中小法人
損金不算入額=支出交際費等-{接待飲食費×50% 又は 800万円×12/12 のいずれか多い方)
要するに、中小法人は1人当たり5千円超の飲食費は年800万円まで損金算入できるということだ。
*計算例
サカナ株式会社 資本金1億円 株主はすべて個人
重要なお客さんと高級料亭での飲食費(1人当たり5千円超)・・600万円
比較的重要なお客さんと居酒屋での飲食費(1人当たり5千円以下)・・200万円
お客さんとのゴルフや観劇費用・・400万円
交際費等の損金不算入額
(600万円+400万円)-800万円(a)=200万円
(a)600万円×50%=300万円<800万円
居酒屋での飲食費200万円は単純に損金となり調整不要である。
| 交際費等の認識
交際費等は、実際に接待などのあった時点で認識をする。
例えば、接待しても仮払いとして経理で費用計上してない場合、会計上の利益を減算調整して所得を減らしていく。税務上は損金として扱うということなのだ。
まとめると以下のとおり。
(会計上)交際費等扱い→(税務上)交際費等扱い 調整は無い
(会計上)交際費等扱い→(税務上)交際費等でない 加算調整
(会計上)交際費等でない→(税務上)交際費等扱い 減算
(会計上)交際費等でない→(税務上)交際費等でない 調整は無い
| 租税特別措置法
この交際費等の規定は、実は法人税本法ではなく時限立法「租税特別措置法」の規定だ。
太平洋戦争に敗戦したあと、日本経済復興のため企業の無駄遣いを抑制するためにつくられた法律なのだが、廃止されることなく現在まで生き延びている。
法人税本法の規定になる日が近いのかもしれない。
| 終わりに
今回の「交際費等」と「役員給与」そして「寄附金」は、法人税の損金算入制限「三羽ガラス」だ。
非常に法人税特有の話題だと思う。
ちなみに個人事業者は交際費等はすべて必要経費にできる。