税理士試験の受験において「理論の暗記」は非常に時間とエネルギーの要る作業だ。
私は税法科目から受験をスタートさせたが、3科目科目合格できたときは、これでようやくキツイ理論暗記から解放されたと喜んだものだ。
理論暗記は専門学校の「理論マスター」を丸暗記していくわけだが、所得税法の分量が特に多くて大変だった。
終盤の「是正手続等」は結局うろ覚えのまま本試験に臨んでしまった。(試験には出なくて助かった)
ところでこの「是正手続等」の理論をよく観察してみると、所得税法ではなく国税通則法の規定とある。
国税通則法(こくぜいつうそくほう)とは何か?
受験時には深く考えることがなかった、この法律について観てみよう。
| 国税通則法とは
国税通則法おは、大雑把にいうと、納税義務の確定手続き(申告・更正・決定など)や、加算税や延滞税などの国税に関する「基本事項」や「共通事項」を定めた法律だ。
「一般法」としての性質を有しており、他の国税に関する法律(所得税法や法人税法など)に、別段の定めがないかぎり、すべての国税に適用される法律である。
| 国税通則法の主な内容
国税通則法は国税の基本的・共通的な事項定められているが、それを具体的に示すと次の通りだ。
・納税義務の成立と確定の時期
・納付すべき税額の確定方法
・国税の納付方法
・国税の徴収手続
・国税の納税の猶予
・国税の納税猶予や延納の際の担保について
・納め過ぎた国税の還付や還付加算金
・本税(所得税や法人税など)に附帯して課される延滞税や加算税(これらを附帯税という)
・更正、決定、徴収、還付などの期間制限について
・税務調査について
などである。
| 申告納税により生じる問題について
会社員は基本的に給与から天引きされる源泉徴収税と12月の年末調整のセットで「確定申告不要」が実現できるが、基本は税務署に自ら申告・納付する「申告納税」である。
自分で税額を計算して申告・納付するわけだから、毎回完璧とはいかないだろう。
ちょっとミスがあったときの手続きが次の通りだ。
*期限後申告
申告期限を過ぎて申告・納付することである。
ペナルティとして延滞税が課されてしまう。
*修正申告
申告書を提出した後、その申告税額が過少だと気が付いたとき、税務署長の指摘があるまでに提出できる。
*更正の請求
申告・納付した税額が過大だった場合、税務署長に対して減額更正を求める。
ここまでは納税者側の手続きである。以下は税務署側の手続きである。
*更正
提出された申告書に誤りがあった場合、税務署長が税金を増やす「増額更正」や減少させる「減額更正」を行う。
*決定
申告書提出義務のある人が、まったく申告書を提出しようとしない場合、税務署側で納付税額を決めてしまうことである。
私の聞いた話では、税務署は仕事が増えるのでこの「決定」が好きじゃないらしい。
| 附帯税の種類
税金を期限内に収めた人とそうでない人で負担が同じだと、正直者が馬鹿を見る状態になってしまうので、申告・納付の遅れたものに対しペナルティが定められている。
これを「附帯税」という。
* 延滞税
納付すべき税額を法定申告期限までに納付しない場合、その翌日から起算して、その税金を完納する日までの期間に応じて、未納税額に対して原則は年率14.6%の割合で計算する。
遅延利息に相当する税金である。
ただし、この割合は高金利時代に設定されたもので、現在の超低金利時代には合わないとのことから、納期限の翌日から2月を経過するまでの期間は特例基準割合+1%と7.3%といずれか低い方に、それより後も特例基準割合+7.3%の割合となっている。
特例基準割合とは、大雑把に言うと、銀行の短期の貸出約定平均金利に1%を加算した率である。
* 利子税
税金の延納や納期限の延長が認められた場合、延長された期間に応じて課される。
附帯税のなかでは唯一経費になるのが特徴だ。
原則は、法定納期限の翌日から延長納期限まで、未納税額に対して所得税・法人税は年7.3%、相続税は年6.0%、贈与税は年6.6%であるが、こちらも低金利の昨今には合わないとして、特例基準割合が適用されている。
*過少申告加算税
「申告期限内」に提出された申告書の税額が過少であったときに、修正申告書の提出または更正があった場合に課される。
修正または更正により納付する税額の10%相当額とされる。
ただし、修正または更正により納付する税額が、期限内に申告した税額または50万円のいずれか多い金額を超えるときは、その金額に対して加重分として、更に5%相当額が加算されてしまう。
(計算例)
期限内申告による税額 100万円
修正申告による追加の税額 200万円
100万円>50万円 →100万円(a)
200万円(1万円未満端数切捨)×10%=20万円(通常の過少申告加算税)
{200万円-100万円(a)}×5%=5万円(加重分)
過少申告加算税の合計は25万円!
* 無申告加算税
「期限内申告」が無かった場合に、期限後に申告書の提出または税務署の決定があった場合に課される。
納付すべき税額の15%相当額が無申告加算税として課され、更にその納付すべき税額が50万円を超える場合は、その超える部分の金額は5%相当額が追加で課される。(合計で20%ということ)
(計算例)
申告してなかった税額 100万円
(100万円-50万円)×15%=7万5千円
(100万円-50万円)×(15%+5%)=10万円
無申告加算税の合計 17万5千円!
* 不納付加算税
会社員は税金が源泉徴収されるので、自ら税務署に出向き申告納税する必要がない。
代わりに会社が給料から天引きした税金を税務署に納付するのである。
会社のように給料を支払いその税金を納付するものを、広義の納税義務者という。
その会社が源泉徴収した税金を法定期限まで納付しなかった場合、課されるのが不納付加算税なのである。
納付税額の10%相当額を追加で納めないといけない。
* 重加算税
納税者が、税額計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽または仮装した場合に課される。
申告あるも隠蔽または仮装により過少申告の場合は、納付すべき税額に対し35%を加算する。
隠蔽または仮装により無申告の場合は、納付すべき税額に対し40%を加算する。
源泉徴収税額を納付しなかった場合、その税額に対し35%を加算する。
また重加算税が課されてしまう年の期限後申告日の前日以前5年前までに、その期限後申告に係る税目(所得税とか法人税とか)について、重加算税または無申告加算税が課されたことがある場合は、重加算税の割合に10%加算されてしまう。(厳しい~)
| 終わりに
税理士試験に「国税通則法」という科目は無い。
将来的に試験制度を改正することがあれば、受験科目に入れていいのではないかと思う。(税法じゃないけど「会社法」も)