給与明細書の控除項目を観察すると、健康保険等の社会保険・所得税そして住民税がその項目として登場してくる。
私も会社員の給与所得者なので、2019年分のその総額を計算してみようと思う。
2019年1月~12月
・社会保険料総額 1,043,577円
・所得税総額 307,400円
・住民税総額 331,300円
住民税の場合、給与天引きされるのを特別徴収という。所得税の源泉徴収に相当する。
こうして振り返ってみると、私は所得税よりも多くの住民税を納めていたわけだ。
今回は住民税についてみてみよう。
| 住民税とは
住民税は「個人住民税」と「法人住民税」の二本立ての地方税である。
地方税である、ということは国税ではない。国税庁の管轄ではなく総務省の管轄である。
ちなみに住民税法という法律があるわけではなく、「地方税法の一部」なのである。
税理士試験でも試験委員は総務省の人だ。(他に事業税、固定資産税も)
「個人住民税」は所得割・均等割・利子割・配当割・株式等譲渡所得割で構成され、「法人住民税」は法人税割と均等割から構成される。
さらに個人住民税は道府県民税と市町村民税からなる。(税額計算の最後で按分する)
それぞれ説明すると
「所得割」は課税を行う年度(4月~翌3月)の初日の属する年の前年(1月~12月)の所得をベースにして計算する。
これを前年所得課税主義といい、計算方法は所得税のクローンと言っても差し支えないくらいよく似てる。
税率は基本は、道府県民税4%・市町村民税6%である。
「均等割」は所得の有無に関係なく、住んでれば課税される。(非課税規定あり)
基本的には、道府県民税が年1,000円、市町村民税が年3,000円だ。
「利子割」は道府県民税だけが課せられる。利子の支払を受ける際に所得税とともに徴収される。税率は5%。
「配当割」は前年の所得計算で総合課税にしなかった場合、申告分離課税または申告不要としたとき課せられる。
申告分離課税、申告不要ともに道府県民税5%、総合課税になると所得割が課される。
「株式等譲渡所得割」は特定口座で株の売買して利益を出して場合に所得税とともに徴収される。道府県民税5%である。(申告すると所得割。税率は道府県民税2%市町村民税3%)
| 税額計算
私は2019年は所得税よりも住民税(所得割と均等割)を多く納付した。
これは2018年に多く稼いだということではなく、その税額計算の仕組みに秘密がある。
各種所得の金額から所得控除を差し引き、それに税率を適用して税額を算出したあと、税額控除を引いて最終税額が確定する。
2019年の住民税は前年と前々年の所得をベースにしたものが混在してるが、翌年度(2020年度)をシュミレーションしてみたい。
私は会社員で給与所得者なので、基本的に給与所得しか得ていない。
株と配当は特定口座で課税関係がすべて完結しているので計算から除外できる。
所得控除は社会保険料控除と生命保険料控除とそして基礎控除のみ。
まずは2019年の所得税を改めて計算してみよう。
・給与所得 5,166,865円
・社会保険料控除 1,043,577円
・生命保険料控除 100,000円
・基礎控除 380,000円
課税総所得金額 3,643,000円(千円未満切捨)
これに超過累進税率を適用して税額を算出。
3,643,000×20%-427,500=301,100
これに復興特別所得税を加算する。
301,100×2.1%=6,300円(百円未満切捨)
301,100+6,300=307,400円!
さて次は住民税である。
住民税は「所得税のクローン」と書いたが、計算過程は微妙に異なっている。
今年度すなわち2020年度の住民税は2019年の所得をベースにするが・・・
まずは一部の所得控除の額が縮小されている。
私の場合だと・・・
社会保険料控除 1,043,577円(同じ)
生命保険料控除 70,000円(縮小)
基礎控除 330,000円(縮小)
なお給与所得の計算は所得税と同じである。
給与所得5,166,865円より所得控除合計1,443,577円を控除すると3,723,000円(千円未満切捨)となり、所得税上の所得より大きくなってしまう。
これに10%(道府県民税4%市町村民税6%)を乗じると148,920円と223,380円(合計372,300円)になる。
ただし、この所得控除の差額を調整するための税額控除「調整控除」を差し引くことができる。
私の場合だと・・・
(イ)5万円+人的控除の差額の合計額80,000円-(合計課税所得金額3,723,000円-2,000,000円)
(ロ)50,000円
(イ)と(ロ)といずれか大きい金額の5%(道府県民税2%・市町村民税3%)を控除できる。
この場合1,000円と1,500円で合計2,500円(少ね~)
それぞれを控除した額が「所得割」となる。
道府県民税 148,920-1,000=147,900円(百円未満切捨)
市町村民税 223,380-1,500=221,800円(百円未満切捨)
2つ合わせて369,700円である。
なるほど、普通に所得税額(2019年分)より高くなっている。
これは10%という比例税率の影響が大きい。私がもっと稼ぐ高額所得者なら住民税の方が安くなるだろう。
上記に均等割5,000円(中央区3,500円toukyout東京都1,500円)が加算される。(東京23区は標準より高い)
374,700円が今年度分として、今年の6月から来年5月まで月割りで特別徴収される。
今年度4月からの徴収とならないのは、4月1日に徴収する者を指定したあと、それを勤務先に通知するので時間差が生じてしまうからだ。
なお月割額は374,700円を12等分(百円未満切捨)して、その額の11倍した額(343,200円)との差額(31,500円)が6月分で、他の11月分は31,200円の均等配分される。
| そういえば・・・
そういえばもうすぐ給料日だ。
税理士試験合格者の誇りにかけて、この計算はあっててほしいが、次回の給与明細書を見るときは相当な緊張感を伴うことになりそうだ・・・!
でも「失敗は成功の母」でもある。
間違ってても、くよくよしないね~