* 分離課税とは
所得税は「超過累進税率」を適用されている。
しかし一部例外がある。
譲渡所得のうち、土地・建物そして株式については「分離課税」が適用される。
(他に山林、退職が分離課税で特殊な税額計算。利子、配当は分離課税と総合課税の併用)
分離課税とは何か?
他の所得と合算せずに、それぞれの所得ごとに定められた税率で課税されることである。
分離課税の譲渡所得では、税率は比例税率が適用される。
比例税率とは金額の大小にかかわらず、常に同じ税率にすることである。
例えば株取引で10万円もうかっても100万円もうかっても同じ税率で税額計算するので、もうけ幅はできるだけ大きい方が有利ということなのだ!

* 土地や建物の譲渡
土地・建物の譲渡はその保有期間で税率が変わる。
譲渡した年の1月1日で所有期間が5年を超えると「長期」、5年以内だと「短期」として扱われ、それぞれ15.315%(+住民税5%)、30.63%(+住民税9%)で課税される。
異様に中途半端な税率になっているのは復興特別所得税が含まれているからである。
2011年の東日本大震災からの復興の財源にするために創設され、平成25年1月1日から令和19年の12月31日まで徴収される。25年間!
さてここで、なぜ短期・長期と分けて課税する必要があるのかということだ。
「短期に重課」、「長期を軽課」するのは、前者が投機目的での土地の売買を抑制し、後者が先祖伝来の土地を売りやすくして流動性を高めることが大きな理由である。
ただし5年がいったいどんな理由で設定されたのかは不明である。
前回の投稿の内容だが、非永住者を来日して5年以下の外国人と規定していた。
所得税は「5年という期間」が好きなのかもしれない。
| 計算方法 |
土地・建物の譲渡所得は次の算式で計算する。
短期、長期ともに、
総収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡損益
総収入金額は販売金額で問題ないと思う。
取得費は少し複雑だ。
土地は購入代金に購入手数料を加算した金額である。
建物は購入代金から減価償却相当額を控除した金額だ。
この減価償却相当額は注意が必要で、「仕事に使用した期間」も「生活で使用した期間」も両方含めて計算しないといけない。
仕事期間より生活期間の方が緩い減価償却を行って計算する。(木造や鉄筋コンクリートなどの違いでそれぞれ異なる償却率適用)
ただしあまりに古くからある先祖伝来の土地・建物の場合、取得費が分からない場合がある。
そういう場合、売った金額の5%相当額を取得費とすることができる。
譲渡費用は仲介手数料、運搬費、土地を譲渡するための建物の取り壊し費用などが該当する。
| 居住用財産(マイホーム)の場合 |
居住用財産すなわちマイホームの譲渡所得の場合、税負担を少なくする特例がある。

私が所得税法の受験勉強してたときは次の4つの特例があった。
① 買換えのの特例
② 譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例
③ 特別控除の特例
④ 軽減税率の特例
いずれも所得税法本法の規定でなく、国税に関する特例を定めた「租税特別措置法」という時限立法の規定である。
毎年改正される(改正・廃止・新設が頻繁に行われる)、日本の税金を複雑怪奇にする「諸悪の根源」ともいうべき法律である。
①は、10年以上住んでるマイホームを買い換えるとき、売値≦買値のときは課税の繰延べ(先送り)、売値>買値のときは利益相当額が課税される、という内容だ。
売値が大きい場合、現金が手元にあるだろうということで課税されてしまう。
②は、マイホームを売ったはいいけど損してしまい、かつ、住宅ローンもある場合、損失の損益通算と繰越控除を認めましょうというものだ。
③は、マイホームを売却して利益が出たら、その利益が3,000万円までは税金がかからない。
3年に1度適用できるが、一般人が複数回この規定の恩恵にあずかることは非常にマレじゃなかろうか。
④は、10年以上所有してるマイホームを売って利益が出たとき、通常の長期譲渡所得の税率よりも更に低い税率を適用できる。
ちなみに③と④はセットで適用できる。
私は不動産売買に詳しくないので、マイホームを売って利益を出せる人がどれほどいるのか分からないが、①~④だと②のケースが一番現実的のような気がする。
つまり、損して売って住宅ローンも残ってるってパターンだ。
損失を出すのはツラいが、少なくとも税金はかからない。
* 株式の譲渡

私が株取引を始めたのは比較的最近の平成時代の半ばからである。
始めた当時は、上場株の譲渡所得に対して7%(+住民税3%)の税率で課税されていた。
しかし現在は上場株式、未公開株式とも15%(+住民税5%)で課税される。
これらの税額に対して2.1%を乗じた復興特別所得税が加算される。
私は昭和生まれのおじさんだが、その私でも最近知った驚愕の事実がある。
実は、株式の譲渡所得は昭和29年(1954年)から昭和63年(1988年)まで、なんと「非課税」であり、課税され始めたのは平成元年以降なのである。
その際に、原則は「申告分離課税」とされ、納税者の選択により「源泉分離課税」も適用できるとされた。
その後の改定を経て現在のカタチになっている。
それにしても昭和時代の株式譲渡所得が非課税というのは驚きだ。
株式の譲渡所得が非課税というのは、アナログな昭和時代は証券市場での所得の把握が困難だったのと、日本の有価証券市場の取引を活性化させたいという考えからだそうだ。
昭和の頃は今と違って利子率も高く、リスクのある株に人気が無かったのだろう。
ただそれでも株だけ非課税というのはとても不公平だということで、課税していく方向に舵を切ったということなのだ。
土地・建物そして株式については、他に様々な特例があり、「特例のデパート」の様相を呈している。
すべてをここで見ることはできないが、今後の投稿で取り上げていきたい。