現在のコロナ騒動で世の中は自粛モード一色である。最低限生活に必要なものを除き、経済活動はストップしつつある。経済活動が止まるということは、モノが動かなくなることだ。モノが動かないと人々に所得は生まれない。
人々に所得が生まれないと、所得を課税標準とする所得税もまた生まれない。所得税こそ税金の基礎だろう。今回は所得税の譲渡所得について考えたい。
譲渡所得は棚卸資産以外の資産の譲渡による所得である。(棚卸資産は事業所得に該当)
資産を売ってお金を手に入れたとき、その金額が資産の取得価額より高ければ、経済的利益を得たということで課税されるのである。
ところが実は、資産の譲渡と引き換えにお金ではない別の資産を手に入れた場合も譲渡所得となるのである。
換言すると、物々交換でも譲渡所得は発生する、ということだ。
交換の場合、交換により取得した資産の時価で自分が提供した資産を売ったものとされる。両者の差額が譲渡所得ということになる。
ただし、ある条件を満たすと譲渡所得課税の先送りができてしまうのである。これを固定資産の交換の所得税法の特例という。
その条件とは・・・・・
① お互いに1年以上所有してた固定資産であること。これは従来から使用してたことを前提としている。
② 譲渡資産と取得資産とが次の同一区分内の資産であること。
- 土地(借地権等を含む)
- 建物(附属設備や構築物を含む)
- 機械及び装置
- 船舶
- 鉱業権(租鉱権等を含む)
③ 取得資産を譲渡した資産の譲渡直前の用途と同一の用途に使用すること。
④ 取得資産と譲渡資産の時価の差額が、多い方の20%相当額を超えないこと。超えると課税されてしまうわけだが、資産どうしの時価に大きい差があるとき、金銭でその差額を埋めるのもアリである。
これらの要件を見て分かるのは、資産の交換が、ほぼほぼ等価交換であることを所得税法は要求しているということだ。
物々交換というと、日本のおとぎ話、わらしべ長者を思い出す。
ある貧乏な男が、藁しべ(わらしべ)→蜜柑→反物→馬→大きな屋敷 と物々交換を繰り返して裕福な暮らしを手に入れるというストーリーだ。
全然等価交換でないから、所得税法の特例対象外でしかない。
それなら同一区分の土地の交換を繰り返したらどうだろうか。20%相当額の差があってもOKなのだから、常に自分の土地の時価が20%低い状態で交換を繰り返すのである。
最終的にスタート時点での土地より、もっと大きな価値のある土地が手に入り、それを売却して大金をゲットするという筋書きだ。
ただそれを所得税法は指をくわえて見てはいない。上記の特例はあくまで課税の先送りであり、売却時の土地の取得費はスタート時点の安い価額ということになるので、売値との差額はとても大きくなってしまう。その差額に対して税金が課せられるのである。
唯一の救いは、土地の譲渡は分離課税の比例税率であることで、他の所得のように超過累進税率でないことか。
なお所得税法では、生活に通常必要な動産(1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や美術品は除く)の譲渡は非課税だから、ご近所さんどうしで生活必需品の交換はノープロブレムである。