消費税法の学習時、理論マスターの第1問は「課税の対象」だった。そこには人生で初めてお目にかかる単語が数多くあった。金銭以外の出資=現物出資がその一つである。
現物出資とは、出資するにあたってお金ではない、資産を提供することをいう。新規に会社を設立するときだけでなく、今ある会社にも行うことができる。
現物出資する際の資産は、まずは土地・建物などの不動産、上場株式等の有価証券、パソコン・OA機器・自動車などの動産、特許権のような無形固定資産も可能である。
出資された側は受け入れた資産の時価をもって株式を発行、出資者に交付する。資産の時価が資本金等の額となるのである。お金じゃなくても資本金になる。これが現物出資である。
現物であろうと金銭であろうと出資を受けて純資産が増加しても、これは資本取引にあたるので、出資を受けた会社には法人税は課されない。あくまで事業のための元手であり、事業活動によるもうけではないからである。
税理士試験合格後、受験しなかった法人税法の勉強を通じて再び現物出資に遭遇した。組織再編税制というテーマでである。
組織再編税制は簡単にいうと、会社どうしの合併等で個々の所有資産の移転があった場合、法人税が定めた条件を満たせば、組織再編による経済的利益に対する課税を先送りするというものだ。
課税の先送りができる再編を適格組織再編、できない再編(課税されてしまう再編)を非適格組織再編という。
豊洲市場の荷受会社7社を例にとると、荷受会社は基本的に市場内販売が主体だが、市場外取引にも力を入れようと、7社共同で市場外の商売中心の商社を創設することにした。ここに7社の間に資本関係はほとんどない。
各社それぞれ外販部門を所有してたが、それらを合体させて新会社をつくるのである。この場合の現物出資の現物とは、各社の外販部門そのものである。
ここで適格になるための要件は、外販部門の主要な資産及び負債が新会社に移転してること、そこの従業員のほとんどが引き続いて働くこと、新会社でも外販の仕事を続けること等である。
従業員がみんな退職したり、まるで方向性の違う事業をやり始めたりしたら非適格となり、経済的利益に課税されるのである。
適格現物出資の場合の資本金等の額は、現物の帳簿価額である。帳簿価額が新会社に移転しただけだから譲渡損益は生じない。しかし会計上は時価で現物出資したことになっていて、会計上の資本金と税務上の資本金等の額はズレが生じている。非常にややこしい(汗)
そして要注意は消費税だ。現物出資の時価で消費課税なのである。(土地のような非課税取引に該当するものは除く)
非適格というと何か欠陥がある印象があるが、全然そんなことはない。言い方が悪いと思う。組織再編の当事者じゃないからそう思うのかもしれないが、非適格の方が企業会計っぽくて私は好きである。
なお豊洲市場7社出資の新会社は私の空想です。