我々が一番身近に感じるネットワークがLAN(Local Area Netwok)である。
LANはオフィス等の限られたエリアで構築されるネットワークだ。
今回はLANについて観てみよう。
・LANの接続形態(トポロジ)
LANは、限られた範囲でコンピュータなどの機器を相互に接続するために用いられる。
LANの接続形態には、バス型、リング型、スター型がある。

現在の主流は、ハブ(集積装置)に各機器を接続させるスター型である。
・有線LAN(イーサネット)
通信媒体にケーブルを用いたLANの代表的な規格がイーサネットである。
バスやハブに接続された各ノードが、通信要求の発生に応じてデータを送信するというシンプルな方式であり、LANの標準化団体であるIEEE(アイトリプルイー)によりIEEE802.3シリーズとして標準化されている。
イーサネットの各規格は次のように表記される。
データ転送速度 (Mビット/秒) | BASE (ベースバンド方式) | 数値:伝送距離(同軸ケーブル) 英字 : 伝送媒体 2:約200m(185m) 5:500m T:ツイストペア F:光ファイバ |
以下にLANの代表的な規格を挙げてみる。
規格名称 | 最大伝送速度 | 使用ケーブル | 最大ケーブル長 | 接続形態 |
10BASE-T | 10Mビット/秒 | ツイストペア | 100m | スター型 |
100BASE-TX | 100Mビット/秒 | ツイストペア | 100m | スター型 |
1000BASE-T | 1Gビット/秒 | ツイストペア | 100m | スター型 |
・無線LAN
通信媒体にケーブルではなく電波を用いたものを無線LANという。
無線LANはIEEEによりIEEE802.11シリーズとして規格化されている。
ESSID(Extended Service Set Identifier)
無線LANが複数ある状況では、各ノード(機器)は接続する無線LANを識別できないといけない。
このためにESSIDやSSID(Service Set Identifier)と呼ばれる文字列が用いられる。

チャネル
無線LANでは、電波の干渉を避けるため、使用する電波の周波数帯を複数のチャネルという単位に区切り、各無線LANで異なるチャネルを使用する。

WPAキー(WEPキー)
無線LANの電波は壁などの障害物を透過しないと機能しない。しかしこれを実現すると、ノードの不正接続や通信データの不正傍受が考えられる。
これを防ぐためにWPAキー(またはWEPキー)と呼ばれる文字列(または16進数)を設定する。
各ノードは、ESSIDに対するWPAキーを知らないと無線LANに接続できず、データの読み取りもできない。

・MACアドレス
LANには複数のノード(機器)が接続されるので、各ノードを識別できないといけない。
ノードの識別に用いられる情報をアドレスといい、LANで用いられるアドレスをMACアドレス(物理アドレス)という。
MACアドレスは、隣接ノード間の伝送で利用するLANのアドレスなのである。

MACアドレスはデータリンク層に相当する48ビットのアドレスで、前半24ビットがNICを製造したベンダのIDで、後半24ビットが固有の製造番号という形式で、NICごとに割り当てられているため、NICが装着されたコンピュータは必ずMACアドレスを持ち重複することがない。
ここにNICとは、ネットワークインタフェースカードのことで、コンピュータにLANケーブルの挿し口ハードウェアのことである。LANアダプタともいう。
また、LANで送受信するデータ(フレームという)のヘッダには送信元と宛先のMACアドレスが設定される。
このため、フレームのヘッダを見れば、どのノードからどのノードへ送信したフレームか、を識別できるようになっている。
・アクセス制御
LANはデータリンク層に相当する。
隣接ノード間の通信を実現するのが、その目的だ。
全ノードが平等な立場で回線やハブに接続され、各ノードが自律的にフレームを送信する仕組みのため、複数のノードが同時にフレームを送信する可能性が高い。
複数ノードが同時にフレームを送信した場合、伝送路上フレームのコリジョン(衝突)が発生し正常な通信ができなくなる。
そこで衝突が発生しないような、発生しても回復できるような「制御」が必要になってくるのである。
このような確実にノード間の伝送を行うための制御を媒体アクセス制御(MAC:Media Access Control)という。
媒体アクセス制御の方式としてCSMA/CDとCSMA/CAが代表的なものだ。
CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)
CSMA/CDはイーサネットで用いられる。有線LANのアクセス制御である。
特徴は次の二つである。
①伝送路が空いていれば自由にフレームを送出できる。空いてない場合は、しばらく送出を見合わせて、改めて伝送路の状態を調べる。
②衝突(コリジョン)を検出した場合は、直ちにフレームの送出を取りやめて、しばらく時間をおいてから改めて送出する。

衝突検出・再送の仕組みにより、仮に衝突が発生しても最終的には正しくフレームが送受信できるようになっている。
ただし、回線利用率が高くなると、応答時間が急激に悪化する現象も生じてしまう。
CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)
CSMA/CAは無線LANで用いられるアクセス制御方式である。
無線だと衝突(コリジョン)が検知できないので、無線帯域を複数のチャネルに分け、未使用のチャネルを用いて送信する。
また、チャネルが空いていても、ランダムな時間を待ち合わせた後に送信し、衝突を極力回避している。

・LAN間の接続装置
ネットワークを作り上げるためには、相互に接続できるようにする装置が必要である。
LAN間の接続装置にはいくつか種類がある。

リピータ、ハブ
物理層のレベルでデータを中継する機器をリピータという。
LANの伝送距離が長くなるほど、電気信号や電波は減衰する。リピータはこれを増幅・整形することで、LANを延長する機器である。

複数のポート(回線の接続口)をもつリピータをハブ(リピータハブ)という。

リピータやハブを多用すると、LANを拡大できる反面、それだけ信号の衝突(コリジョン)の発生率が高まる。
これらの機器がフレームを素通りさせるからである。
ブリッジ、スイッチングハブ
ブリッジやスイッチングハブ(レイヤ2スイッチ)は、データリンク層のレベルでデータを中継する装置である。
これらの機器はデータリンク層のアドレス(MACアドレス)を識別して、フレーム(データ)を中継するかどうかを決める。
リピータやハブに比べると通信量(トラフィック)を分割でき、コリジョンの発生を抑制できる。

ルータ
ネットワーク層のレベルでデータを中継する装置をルータという。
ネットワーク層のIPアドレスを識別して、データを最適な経路に中継する。

ルータと同等の役割を果たすレイヤ3スイッチという製品もある。
レイヤ3スイッチはルーティング処理をハードウェアで行うため、ルータに比べデータを高速に転送できる。

ゲートウェイ
ゲートウェイは、トランスポート層以上のレベルで、プロトコルの異なるネットワーク同士を接続するためのプロトコル変換機能をもつ装置である。

インターネットが事実上の標準となった現在でも、TCP/IPとは異なるプロトコルを用いるネットワークは存在する。
これをインターネットに接続するときに、ゲートウェイを用いてプロトコルの相互変換を行うのである。
・後記
コロナウイルスの急激な再流行により、私の勤める会社も部分的なテレワークを検討し始めた。
さすがに現場(豊洲市場の卸売り場)の業務はテレワークしづらいが、それ以外の事務処理を遠隔操作しようというのである。
まだ試行錯誤状態だと思うが、コロナ騒動は仕事の有り方を根本的に変えてしまうかもしれない。